「最果ての少年―熱砂の巨兵〈1〉」

■感想メモ。
「最果ての少年―熱砂の巨兵〈1〉」
最果ての少年―熱砂の巨兵〈1〉 (C・NOVELSファンタジア)
 数百年の間、竜巻に閉じこめられた辺境の村で、まだ見ぬ“海”に憧れる少年カルス。大地が揺れた夜、緑の炎をかざす兵士たちが村を襲う。愛する者たちを殺され、辛くも逃亡したカルスを待っていたのは、果てしない死の砂漠だった。美貌の敵将“白天馬”への復讐を誓い、カルスは“黄金の砂”をめぐる戦乱に身を投じる。自身に、世界を救う“力”が眠っているとも知らずに…。疾風怒涛の冒険ファンタジー、開幕。

 シリーズ第1弾。
 1冊目だけあってかまるっとプロローグのような内容でしたが、世界観もキャラクターもみっしり詰まっていて読み応えがありました。後半にばたばたっとキャラが増える印象で、ちょっと把握に手間取りましたが……。主人公たちに、それぞれの陣営に……と、思惑がどう絡み合っていくのかが楽しみです。村の襲撃から〈白天馬〉を主人公が仇と憎むのは当然の流れなのですが、〈白天馬〉の反応は思わぬもので、彼ら二人の関係はどうなっていくのだろう、仲良くなるような展開はあるのだろうか、と気になりました。一方の主人公とシーバの関係はやや唐突なものに感じられてしまったので、「絆」がこれから築かれていくのに期待しています。
 

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「不思議絵師 蓮十 江戸異聞譚」

■感想メモ。
「不思議絵師 蓮十 江戸異聞譚」(かたやま和華・メディアワークス文庫)
不思議絵師 蓮十―江戸異聞譚 (メディアワークス文庫)
 時は文化文政期の江戸。幕末なんてどこ吹く風の太平楽な町の片隅に、駆け出しの浮世絵師がひとり。女性と見紛うばかりの美貌に、優れた才を持つ。名は石蕗蓮十という。蓮十の筆にはふしぎな力が宿っている。描くものに命が吹き込まれるのだ。でも、それは内緒。蓮十の周りはいつも賑やかだ。蓮十の世話を焼きたがる地本問屋のお嬢さん小夜に、悪友の歌川国芳。彼らとともに蓮十は、今日もふしぎな筆の力で町で起こる事件を解決することになり?江戸の情緒あふれるふしぎな浮世絵物語。

 描いた絵が動き出す不思議な力を持つ絵師・蓮十が巻き込まれる様々な事件。3つのお話が収録されています。
 とにもかくにも、小夜お嬢さんが可愛らしくて良いですね。全身から好き好きオーラ出してるのに蓮十に気付いてもらえない不憫さ(笑)。実際は眩い光のような存在の彼女のおかげで、蓮十はだいぶ救われているのでしょうけども。
 3話の中では国芳との勝負をする2話目が好きですね。湿っぽい話もいいのですが、明るい話はもっと良し。シリーズ化されて色々なお話が読めたらいいなぁと思います。

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「孤城に眠る薔薇」

■感想メモ。
「孤城に眠る薔薇」(倉本由布・f-Clan文庫)
孤城に眠る薔薇 (f-Clan文庫)
 「妻殺しの伯爵」と噂される孤島の城の主、ダミアーノに嫁いだアリーチェ。先妻であった従姉を殺したのだという噂の真偽を訊ねたかったが、彼は冷淡で会話もない。だが夜になると濃密な薔薇の香りに包まれ、部屋を訪れたダミアーノに優しく愛おしげに触れられる夢を見る。夢と現実との差に苦しみながらも、アリーチェは従姉の死の真相を探るが、やがて何者かに命を狙われ始め…。

 ミステリアスな雰囲気を持ったロマンス。
 夢か幻か分からない幻想的なダミアーノとの逢瀬と現実での冷たい態度のギャップは、真相がわかった後だと、彼の内心を想像してはにやにやしてしまいます。
 たった一つの、しかし重大な間違いが生んでしまった悲劇。アンジェロの行動はちょっとどうなのかなーと思ったりしつつ。1冊で綺麗にまとまった物語でした。

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「若き検死官の肖像」

■感想メモ。
「若き検死官の肖像」(椹野道流・f-Clan文庫)
若き検死官の肖像 (f-Clan文庫)
 晴れて検死官となり意気揚々とするサイラス。だが赴任地では事件の詮議も弔いも、すべてはネクロマンサーに委ねるという。その不思議な業に驚愕するも疑惑を覚えたサイラスは直接対決を意気込むが、ネクロマンサーのヴィンセントは浮世離れした男で、それも空回るばかり。と、そこに殺人事件が発生。サイラスは検死官の必要性を認めさせようと奮起し、死人の語る嘘を暴くが…。

 ネクロマンサーが絶対的に信じられている土地で奮闘する検死官の青年のお話。死者が自分で「○○に殺されました」なんて言っちゃえば、たしかに検死の必要はない訳で。しかしネクロマンサーの術も万能ではない、という隙間に検死官の技術がかちっと合わさるのが面白い。ファンタジー的な職業と現実的な職業の組み合わせの妙です。サイラスの向こう見ずだけど自らの非はすぐに認めて謝罪するところや、ヴィンセントのちっとも年相応に見えずずれているところなど、キャラの性格も愉快な組み合わせでした。
 お互い補い合う間柄になったわけですが、今後はどうなっていくのでしょうか。個人的には、これまで一度も「死者の嘘」はなかったのかな、というところが気になったりしました。

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「記憶泥棒 きっとあなたを好きになる」

■感想メモ。
「記憶泥棒 きっとあなたを好きになる」(神埜明美・コバルト文庫)
記憶泥棒 きっとあなたを好きになる (コバルト文庫)
 誰からも慕われる王子アドリアンが、魔物に記憶を奪われてしまった。王子の秘密の恋人だったリュドミカは、すべてを忘れてしまった彼に、事実を告げることができない。もともと許されない恋だから―迷いながらも、騎士団の一員でもあるリュドミカは、王子の記憶を取り戻すために魔物を追う。だが上司でもある当の王子は、やる気があるのか微妙な態度で…?身分違いの恋の行方は。

 秘密の恋人だった相手が記憶喪失になり、そのことを忘れてしまった……という設定は好みなんですけど、王子様が落ち着きすぎ&一人でほいほい解決してしまうので、ただリュドミカが空回りしてるだけのように見えてしまいました。王子は別に記憶喪失になってもそんなに困っていない(ように見える)ので、悲劇的な感じも薄いです。着地点が「恋人だったことが分かること」で、他のことが結構置き去りにされているので、すっきりしない感じ。もうちょっと、秘密の恋人だった頃の話とか、いちゃいちゃしてる(た)ふたりを見てみたかったです。

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「新月が昇るまで2 鋼鉄の少女」

■感想メモ。
「新月が昇るまで2 鋼鉄の少女」(諸口正巳・C★NOVELS FANTASIA)
新月が昇るまで2 - 鋼鉄の少女 (C・NOVELSファンタジア)
 一年で聖ロジリアン神国を灰燼に帰すのだ―王国ヴァドロニアの狂王によって集められた灰燼騎士団。高い破壊能力を持つ巨大な鋼鉄の怪物を召還する力を買われ、騎士に任命された少女サンナは、これまで信じて来た教会を敵にし、天使すらも殺戮するようになる。生きるために、そして、魔女として処刑されるところを助けてくれたジグやニムのために…。気鋭が描く人と神と悪魔の物語。緊迫のシリーズ第二弾。

 シリーズ第2弾。
 巻によってメイン視点となるキャラが変わるようで、今回はサンナが主役。ジグラートとニムが別々に行動しているので、二人の掛け合いがあまり見られないのが残念だなぁと思っていたら……。サンナとニムという組み合わせも面白かったんですけどね。すぐには難しいと思いますが、再びあのコンビが見られることを願ってやみません。心の尻尾はがっちりつかまれていたようです。
 キャラもだいぶ増え、色々明かされたこともあって、この先どうなるんだろうとわくわく。特に師弟対決が気になります。わりとさくさくキャラが死んでいくので、最終的に師匠も死んでしまいそうですが……。

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「災獣たちの楽土2 赫奕の怒り」

■感想メモ。
「災獣たちの楽土2 赫奕の怒り」(尾白未果・C★NOVELS FANTASIA)
災獣たちの楽土2 - 赫奕の怒り (C・NOVELSファンタジア)
 長年、食料庫として搾取し続けていた隣国・神槌に反乱を起こされた薙古之国に後はなかった。自国は災獣・震魚が大暴れし荒廃する一方なのだ。それなのに、唯一希望が残されているはずの環天之国に交渉役として派遣されたのは依守也という青年ひとりで…。―覇気のない同行する犬だけを家族と嘯く小役人の―。

 シリーズ第2弾。
 犬バカ小役人が主人公ということで、私のセンサーにぴぴっと来ました。思った以上にヘタレでしたけども、それ以上の頑張りがあって良かったと思います。
 搾取する国と敵視する国の人間同士という背景がありつつも、変化してく依守也と流火の関係。ふたつの国の、災獣に対する考え方の差と事情を知るにつれ何とも切なくなり、度々うるっと来てしまいました。愛し愛されたい、という気持ちは一途なもの。薙古之国が変わっていくにはまだまだ時間が必要ですが、いつか災獣と愛情が築かれる日が来るといいなと思います。

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「この家に勇者様もしくは救世主さまはいらっしゃいませんか?!2」

■感想メモ。
「この家に勇者様もしくは救世主さまはいらっしゃいませんか?!2」(川口士・一迅社文庫)
この家に勇者様もしくは救世主さまはいらっしゃいませんか?! 2 (一迅社文庫)
 異世界の危機をまず解決した涼が次に向かった場所は宇宙。復活した宇宙海賊たちが猛威をふるっているというのだが、この宇宙戦争の背景には幼い頃の涼には想像もつかなかった事情があると、高校生になったいまはわかり対応に苦慮する。そんな中、涼の前に立ち塞った敵は、宇宙海賊の世界へと戻っていた母の美幸と妹の希美だった。実の母妹と涼は戦えるのか。そして、ついに姿を現すこの度重なる危機を引き起こした真の敵の正体は?!異世界の危機てんこ盛り、川口士の伝説のデビュー作、ここに復活。

 全2巻の2巻目。
 1巻同様、すごく消化試合というか、やはりどうにも流れ作業的だという印象が抜けませんでした。主人公と因縁の相手が出てきても、その因縁ができた経緯は前日談であり語られない部分なので、登場人物たちがどういう感情を抱いても読者としては蚊帳の外で「ふーん」となってしまう。最後まで感情移入しにくかったです。
 でもって、主人公の父親は何者なのか、とか、明かされずに終わったこともあったりで、もやもや感が残りました。
 それにしても、他作品の絵師さんにカラー口絵やら巻末穴埋めやらさせてるのは酷いというかなんというか(笑)。でもご本人はとても楽しそうなのでいいのかなーなんて思ったりしました。

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「この家に勇者様もしくは救世主さまはいらっしゃいませんか?!1」

■感想メモ。
「この家に勇者様もしくは救世主さまはいらっしゃいませんか!?1」(川口士・一迅社文庫)
この家に勇者様もしくは救世主さまはいらっしゃいませんか?! 1 (一迅社文庫)
 ある日、俺の家にやってきたのはかつて助けた別の銀河のお姫様、異世界の巫女、権力闘争に巻き込まれている魔王の娘、悪の組織と闘う美少女アンドロイド、そして謎の魔法使いの転校生(女の子)だった。
『千の魔剣と盾の乙女』で大人気、川口士のデビュー作がここに大加筆修正verで登場!

 作者デビュー作「ステレオタイプ・パワープレイ」の加筆修正版の分割第1巻。元のタイトルの方が良かったなぁ……と思う私ですが、旧版は読んでいません。
 過去に何度か世界の危機(異世界含む)を救った主人公、という前提があるので、最初から強いし、女の子たちからの好感度も高い状態。「完成された」感がとてもするので、ピンチがあんまりピンチに見えなかったり、幾つもの世界の危機をいっぺんに解決しなくてはならないので、ひとつの世界を救うのが作業的に見えてしまったりしました。女の子たちも主人公に理解があって冷静で(幼馴染み除く)揉めたりせず協力的であるので、すんなり行きすぎて盛り上がりに欠けます。女の子ひとりひとりは可愛いと思うのですが……。知らなかった主人公の過去に右往左往する幼馴染みをメインとして見るべき、なんでしょうか。
 とりあえず2巻へ続きます。

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「鈍感な僕と鋭い彼女」

■感想メモ。
「鈍感な僕と鋭い彼女」(にのまえあゆむ・一迅社文庫)
鈍感な僕と鋭い彼女 (一迅社文庫)
 「先輩には、未来が視えてるのよ」彼女・櫛守棗は喜色満面の笑みを浮かべ僕・八塚武宏を指して、そう断言した。
「わたしより年上なのに、そんな子供の空想みたいなことを本気で言ってるんですか?」
淡々とした口調で反論した妹の小詠も胡散臭そうに僕を見つめる。そんな二人の視線を受けて、僕は――とりあえずアイスコーヒーで喉を潤した。……そう、僕には小さい頃から、少し先の未来が視える妙な能力が確かにあった。でも、なぜ赤の他人である棗が僕の秘密を知っているのかというと……。

 主人公の「少し先の未来が見える」能力が実在すること・その発動条件の解明と証明のシーンが面白かったです。主人公と、証明する側のヒロイン、懐疑的な主人公の妹、という取り合わせもいいですね。懐疑的なくせにこっそり占いを趣味としてたりする妹が「口では何と言おうとお兄ちゃん大好き」オーラがものすごく出ていて可愛かったです。
 登場人物も少ないし、結構シンプルなお話。証明終了後は能力バトルとかになったら嫌だなぁと思いましたが、結構いい感じに着地できたのではないでしょうか。主人公のあまりにもひどい鈍感っぷりを別にすれば……(笑)。

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