「絵画の住人」

■感想メモ。
「絵画の住人」(秋目人・メディアワークス文庫)
絵画の住人 (メディアワークス文庫)
 国分寺駅から徒歩数分のところに、隠れ家のような画廊がある。名画の複製ばかりが飾られている、その小さな画廊には、ある特別な秘密が隠されているらしく―。高校を中退し、バイトで食いつなぐ諌早佑真は、ある日、美しい少女に導かれ、AOKI画廊へと足を踏み入れる。絵画には興味のない彼だったが、画廊のオーナーから頼まれ、雇われ画廊主を務めることに。しかし、働きはじめた佑真は、すぐあることに気づく。―この画廊の絵、生きているんじゃないか…。

 絵画の中から現れる物や人物たち。彼ら彼女らに主人公が振り回される様はどこか微笑ましいです。次はどんな絵から何が飛び出すのか?そういった楽しみもあります。
 題材となった絵は有名なものが多く、その説明も知っているものあり知らないものあり……ですが、説明の仕方が少々こなれてないなぁと感じる部分も。二章から四章の末には登場した絵画が掲載されていますが、モノクロなので分かり辛いのが惜しい。
 主人公が画廊を訪れ、画廊主となるまでの1週間の物語。続編をにおわすラストになっているので、続きが読めると良いなぁと思いつつ。

肷

「不思議絵師 蓮十 江戸異聞譚」

■感想メモ。
「不思議絵師 蓮十 江戸異聞譚」(かたやま和華・メディアワークス文庫)
不思議絵師 蓮十―江戸異聞譚 (メディアワークス文庫)
 時は文化文政期の江戸。幕末なんてどこ吹く風の太平楽な町の片隅に、駆け出しの浮世絵師がひとり。女性と見紛うばかりの美貌に、優れた才を持つ。名は石蕗蓮十という。蓮十の筆にはふしぎな力が宿っている。描くものに命が吹き込まれるのだ。でも、それは内緒。蓮十の周りはいつも賑やかだ。蓮十の世話を焼きたがる地本問屋のお嬢さん小夜に、悪友の歌川国芳。彼らとともに蓮十は、今日もふしぎな筆の力で町で起こる事件を解決することになり?江戸の情緒あふれるふしぎな浮世絵物語。

 描いた絵が動き出す不思議な力を持つ絵師・蓮十が巻き込まれる様々な事件。3つのお話が収録されています。
 とにもかくにも、小夜お嬢さんが可愛らしくて良いですね。全身から好き好きオーラ出してるのに蓮十に気付いてもらえない不憫さ(笑)。実際は眩い光のような存在の彼女のおかげで、蓮十はだいぶ救われているのでしょうけども。
 3話の中では国芳との勝負をする2話目が好きですね。湿っぽい話もいいのですが、明るい話はもっと良し。シリーズ化されて色々なお話が読めたらいいなぁと思います。

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「0能者ミナト<3>」

■感想メモ。
「0能者ミナト<3>」(葉山透・メディアワークス文庫)
0能者ミナト〈3〉 (メディアワークス文庫)
 死なない死刑囚を殺して欲しい。まるで、矛盾しているかのような奇妙な依頼。対面を果たした死刑囚は物静かで端整な面立ちの青年だった。だが、その本質を知れば慄然とする。不死者ゆえか、死を愛する殺戮者。しかも、あらゆる方法をもってしても蘇るというのだ。自分の死が楽しめないから殺すのだとうそぶく青年。いかなる怪異が不死をもたらしたのか、本当に殺すことはできないのか?異端者、湊の知性がその謎に挑む。

 シリーズ第3弾。
 今回も、怪異に対する解決法が面白かったです。特に2話目の夢魔の扱いが身も蓋もなさ過ぎて……。この話は沙耶の見ている夢の中での理沙子や湊のポジションが笑えました。理沙子本人に教えちゃうところが残酷というか何と言うか(笑)。そしてやっぱり、事件解決後の大人組の会話シーンが好きなのでした。彼らの過去に何があったのか、まだ仄めかす程度ですけれど、明かされるのが楽しみです。

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「ビブリア古書堂の事件手帖2~栞子さんと謎めく日常~」

■感想メモ。
「ビブリア古書堂の事件手帖2~栞子さんと謎めく日常~」(三上延・メディアワークス文庫)
ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫)
 鎌倉の片隅にひっそりと佇むビブリア古書堂。その美しい女店主が帰ってきた。だが、入院以前とは勝手が違うよう。店内で古書と悪戦苦闘する無骨な青年の存在に、戸惑いつつもひそかに目を細めるのだった。変わらないことも一つある―それは持ち主の秘密を抱えて持ち込まれる本。まるで吸い寄せられるかのように舞い込んでくる古書には、人の秘密、そして想いがこもっている。青年とともに彼女はそれをあるときは鋭く、あるときは優しく紐解いていき―。

 シリーズ第2弾。
 今回も4つの本に纏わる謎を解く連作短編。取り扱われている本のうち、読んだことがあるものはひとつもなかったものの、「UTOPIA 最後の世界大戦」については某鑑定番組に出てきてすごい値がついていた記憶があったので、一番興味を惹かれました(値段が高いということだけで内容はしらなかったこともあり)。次点はタイトルだけ知っていた「時計じかけのオレンジ」でしょうか。
 大輔と栞子さんの微妙な距離感ににやにやしつつ、お母さんが出てきたときにどうなるのかという不安もちらり。でもしばらくは栞子さんが謎を解いていくお話が読みたいなぁと思うのでした。

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「沢木道楽堂怪奇録―はじまりのひとり―」

■感想メモ。
「沢木道楽堂怪奇録―はじまりのひとり―」(寺本耕也・メディアワークス文庫)
沢木道楽堂怪奇録―はじまりのひとり (メディアワークス文庫)
 なんでも屋を営む男と元気が取り柄の女子高生。男は霊を見ることができ、少女は霊に好かれていた。そんなふたりの怪奇でのんきな短編集。公衆電話の囁き、声を聞いた少女は恐怖と出会う(「囁き」)。腹を引き裂き自殺した妊婦、彼女の身に起きたこととは?(「はじまりのひとり」)。脳を持たない霊はいかに思考するのか。そもそも霊とは(「霊に魂の不在を説く」)。ベルクの名曲を巡る、ふたりの奏者の物語。(「ある天使たちの思い出に」)。以上四編収録。

 ホラーありコメディタッチの話あり、の短編集で楽しめました。個人的にお気に入りは「霊に魂の不在を説く」。タイトルどおり、幽霊に対して幽霊についての講釈をするというずれた状況がおかしく、そして幽霊になった彼が自殺した理由とその想いが理解できてしまってとても切なかったです。ホラー系の話もいいんですが、2話目はすっきり終わってないところが却って恐怖をあおっているような。「これ以上関わりたくない」沢木の気持ちも分からないではないですが、ちゃんと解明してよと思わないでもなく。あれをほったらかしで良かったのかどうか、そこのところが気にかかりました。2巻も出そうなので、そこで触れてもらえるのでしょうか……。

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「悪魔と小悪魔」

■感想メモ。
「悪魔と小悪魔」(大坂翠・メディアワークス文庫)
悪魔と小悪魔 (メディアワークス文庫)
 人間の願いごとを叶え、その見返りに魂を手に入れる悪魔たち。その中でも、さまざまな手練手管で人間社会を堕落させてきたバルサザーは、地獄きってのヤリ手として広く知られていた。ある日、人間に召喚され地上にやってきた彼が出会ったのは、恐ろしいほど悪知恵の働く一人の美少女だった。彼女の魂を狙うバルサザーだが、思い通りにはいかず―。お互いを出し抜こうとする、イケメン悪魔と小悪魔美少女の奇妙な同居生活を描く、マジカル・ホームコメディ(!?)。

 帯だと「キレ者の悪魔VS悪知恵の働く美少女」とありまずが、知恵比べではなく「ホームコメディ」なのがポイント。
 駆け引き的なものよりは、美少女の手の平で良い様に転がされちゃうイケメン悪魔のお話。ずーっとドタバタしっぱなしなので、伏線回収のはじまる終盤までは、少々ダレ気味でした。バルザサーの語り口は好みなんですが、お隣の人たちとか、悪魔よりもあり得なさそうな人たちの不気味さにうんざりさせられたりも。肝心の仁緒の描写が薄いように思えたのも気になるところでした。もうちょっとふたりの駆け引きとかじっくり見たかったです。
 しかしながら、伏線回収については大小様々、綺麗にまるっと拾えていたので良かったです。なんだかんだで、登場人物たちが収まるところに収まった、という印象でした。

肷

「探偵・日暮旅人の贈り物」

■感想メモ。
「探偵・日暮旅人の贈り物」(山口幸三郎・メディアワークス文庫)
探偵・日暮旅人の贈り物 (メディアワークス文庫)
 目に見えないモノを“視る”能力を酷使し、倒れた旅人。陽子と灯衣は夜通し看病するが、2人が目覚めた時、旅人の姿は消えていた。陽子たちが心配する中、旅人は感覚を失うきっかけとなった刑事・白石に接触していた。そんな時、白石の息子が誘拐される。それを旅人の仕業だと踏んだ白石は、陽子を連れ去るという暴挙に出て!?果たして探偵・日暮旅人は『愛』に触れることができるのか。灯衣と母親の物語『愛の旅』を含む全4編を収録した、感動のシリーズ完結巻。

 シリーズ完結。
 前巻の引きから、旅人の過去にまつわる事件を解決して完結するのかと思いきや、わりと早い段階で決着が付きました。ではそのあとは?というと、今までちらっとは触れられていたものの、もう登場することはないのだろうかと思われていた、テイちゃんのお母さんのお話。事件解決後にこの話が来ることで蛇足とならず、過去の出来事で語られてなかった部分を補足して過去から現在までひとつながりになるのが上手いです。テイちゃんの語る「家族+α」のメンバーにくすりと笑ったり。
 エピローグから察するに、旅人はやっぱり……なんでしょうけども、周囲の人たちに温かく支えていってもらえたらいいな(その点は心配の余地は無いのでしょうが)、そんなことを思った最終巻でした。

肷

「妄想ジョナさん。」

■感想メモ。
「妄想ジョナさん。」(西村悠・メディアワークス文庫)
妄想ジョナさん。 (メディアワークス文庫)
 大学一年生の春、恋する僕は確かに幸せだった。憧れの人が、自分の妄想の産物だと気付くまでは。大学二年の秋、傷心から立ち直れない僕の前にひとりの女性が現れる。その名はジョナさん。彼女もまた僕の妄想の産物だ。驚いたことに彼女は、僕を妄想から解放すると宣言した。自らの妄想に導かれ、壮大な脱妄想計画が幕を開ける。大学キャンパスがロンドンに変じ、ラブホテルが魔王の城と化す、妄想にまみれた東京多摩市で展開する、騒々しくも切なく、悲しくも情けない新感覚恋愛ストーリー。

 主人公が(妄想の産物である)ジョナさんと一緒に暮らすくだりは、本人にとっては問題なくとも、たしかに周囲には奇異に映るだろうなぁと感じられました。主人公視点で書かれているので、どうしても主人公の肩を持ちたくはなるのですが……。スナフキン、もとい砂吹視点の話とかも見てみたかったですね(名前のせいで外見イメージがスナフキンに固定されてしまって困った砂吹さん)。
 妄想美少女が現状からの脱却をアレコレ手伝ってくれ、徐々に改善され、そして……という流れは、実にストレート。……まぁその間だいぶぐだぐだ悩んだりはしてましたけども。切ない余韻を残しつつも、綺麗にまとまった1冊でした。

肷

「不思議系上司の攻略法」

■感想メモ。
「不思議系上司の攻略法」(水沢あきと・メディアワークス文庫)
不思議系上司の攻略法 (メディアワークス文庫)
 梶原健二はしがないSE。その日も土曜日にも関わらず取引先に呼び出されていた。仕事が一段落した後、連れて行かれたのはよりによってメイド喫茶。しかし、健二はそこで「カヨ」と呼ばれるメイドと出会い、その献身さに一時の癒しを得たのだった…。そして月曜日。グループ企業から派遣された年下の女性が健二たちのチームの上長として着任。露骨に煙たがる同僚たちをよそに、健二はまったく別の衝撃を受けていた。その女性はメイドの「カヨ」に良く似ていて…!?

 シリーズ第1弾。
 別に上司は不思議系ではないし、攻略もしてませんでした。
 でも、仕事では次から次にトラブルが降って湧いてくるわ、二重生活をしている上司の秘密を守るべく奮闘しなくてはならないわのめまぐるしい展開で、さくさくテンポよく読めてめでたしめでたしで終わるので読後感は良かったです。ただ、嫌なキャラはかなり嫌な感じの描写なので、複数出てくるとちょっとイラっとさせられる部分も。主人公側に味方が少ない状況から果たして好転したのかな?という疑問もちょっと残りました。次で同僚たちの態度も変化してると良いなぁと思いつつ(ラストで手伝ってくれましたけどやや描写不足に感じられたので)。
 それにしても、平日は残業当たり前みたいなハードな仕事、土日はメイド喫茶って、主人公とヒロインは無尽蔵な体力の持ち主なんでしょうか……。

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「砂上の剣~イーハの少年剣士~」

■感想メモ。
「砂上の剣~イーハの少年剣士~」(水藤朋彦・メディアワークス文庫)
砂上の剣―イーハの少年剣士 (メディアワークス文庫)
 とある砂漠の街。二本の剣がぶつかりあい、甲高い音が空へ駆け上がっていった。静まり返っていた観客席で大きな歓声が沸き起こり、さらに口笛や足踏みが加わる。互いの全てを賭けて、そして勝負が始まった、その証しだった。ここは、町の中心にある『闘技場』。少年剣士ハールの晴れ舞台である。たくさんの夢と希望が渦巻くこの『闘技場』で、ハールは戦い続ける。最強の剣士を目指して。彼にとって『闘技場』こそが全てで、青春だった―。メディアワークス文庫が贈る、ライトファンタジー。

 闘技場で戦う少年剣士ハールの日々を描いたファンタジー。
 分厚いです。……の、わりにはサブキャラのエピソードが未消化に思えてしまう不思議。たとえばアラシェスとサウィードの過去だとか、商人親子の話だとか、賞金稼ぎの人とか。ハールを中心としている以上、あれもこれもは描けないでしょうけども、これだけページがあるのに……と思わずには居られませんでした。
 ハール自身の物語については、挫折からの復活、親しい人間の死、最後の決断、とポイントは押さえてあるものの、最後はそれでいいんだ……とちょっともやもやっとしたものが残りました。もうちょっとスッキリ解決はできなかったものかなぁと。

肷