「青い星まで飛んでいけ」

■感想メモ。
「青い星まで飛んでいけ」(小川一水・ハヤカワ文庫JA)
青い星まで飛んでいけ (ハヤカワ文庫JA)
 それは人間の普遍的な願い―彗星都市での生活に閉塞感を抱く少女と、緩衝林を守る不思議な少年の交流を描く「都市彗星のサエ」から、“祈りの力で育つ”という触れ込みで流行した謎の植物をめぐる、彼と彼女のひと冬の物語「グラスハートが割れないように」、人類から“未知の探求”という使命を与えられたAI宇宙船エクスの遙かな旅路を追う表題作まで、様々な時代における未知なるものとの出逢いを綴った全6篇を収録。

 短編集。
 普段の作品を読んでいると「もっと恋愛成分を」なんて思うこともあるのですが、いざ前面に押し出した話を読むと「なんか違う」と感じてしまう不思議。いつものさじ加減の方が個人的には好みかなぁと。
 気に入ったのは「彗星都市のサエ」と「占職術師の希望」「青い星まで飛んでいけ」の3作。「彗星都市の~」はボーイ・ミーツ・ガールで入り込みやすい話で読後感が爽やかで良いです。「占職術師~」は自分も天職見て欲しい!というのもありますが、主人公の能力の面白さと使い方の上手さがいいなぁと。ヒロインとの関係も好き。「青い星~」はエクスかわいいな!に尽きます。活動スパンが途方もない年月で、遠すぎる未来に思いをはせると、そこに人類は存在していないかもしれないということに一抹の寂しさも感じました。

肷

「星空から来た犬」

■感想メモ。
「星空から来た犬」(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ・早川書房)
星空から来た犬 (ハリネズミの本箱)
 星々の世界の住人シリウスは、無実の罪で犬に姿を変えられ、地球へ追放となった。星空へもどるには、失われた魔法の道具ゾイを見つけるしかない。飼い主となった孤独な少女キャスリーンと心を通わせるいっぽうで、シリウスは危険な冒険に乗りだしてゆく!ファンタジイの女王ジョーンズの若き日の傑作。

 犬の視点で展開していく物語に惹きつけられました。
 犬の姿に変えられてしまったがために犬としての本能に振り回され、散歩に連れていかれて興奮したり、庭から脱出できてはしゃいだり、おなかがすいてどうしようもなくなったり……と、こんな調子が続くので果たして目的は達成できるのかと不安になりつつも笑えてしまいます。でも、シリウスが少しずつ成長していき、周囲の猫や犬、そして人間たちとの絆を作り上げていく過程はとても良かったです。だからこそ、ラストシーンがどうしようもなく切なくなるのですが……。

肷

「天冥の標2 救世群」

■感想メモ。
「天冥の標2 救世群」(小川一水・ハヤカワ文庫JA)
天冥の標 2 救世群 (ハヤカワ文庫JA)
西暦201X年、謎の疫病発生との報に、国立感染症研究所の児玉圭伍と矢来華奈子は、ミクロネシアの島国パラオへと向かう。そこで二人が目にしたのは、肌が赤く爛れ、目の周りに黒斑をもつリゾート客たちの無残な姿だった。圭伍らの懸命な治療にもかかわらず次々に息絶えていく感染者たち。感染源も不明なまま、事態は世界的なパンデミックへと拡大、人類の運命を大きく変えていく――すべての発端を描くシリーズ第2巻

 シリーズ第2弾。
 あらすじを見ると、1巻と時代も舞台も違っていて、ストレートに1巻からの続きを待ち焦がれていた身としては肩すかし。しかし2巻単品で読んでも、未知の感染症に対する混乱や解明への戦いに十分に惹きこまれました。そして見え隠れする1巻とのリンク……。3巻ではまた舞台が戻るようで、奇数巻偶数巻でストーリーを進めて行くのかな?と思われました。どちらも面白いのは良いですが、焦らされますね。
 2巻も登場人物たちにとって過酷な展開ではありますが、1巻ほどの衝撃ではなかったかも。というか、1巻が強すぎたのかもしれません。どちらの星のキャラたちも、皆幸せになって欲しいと願うばかりです。

肷

「地球保護区」

■感想メモ。
「地球保護区」(小林めぐみ・ハヤカワ文庫JA)
地球保護区 (ハヤカワ文庫JA)
 環境汚染で人類が地球から退去して数百年。各植民惑星で増加し地球系連合を組織した人類は、もはや全員の地球回帰が不可能になっていた。だが、独自に回帰し回復途上の自然を再開発する人々が増え、問題化している。連合の地球保護委員会に環境調査を任された賢女コーリン、彼女に同行しつつも密かに別命を受ける青年シウ、そして彼らの命を狙う少女ニナ—この星を愛するが故の様々な想いが、未曾有の危機を招来する。

 「環境を守る」ということ、生きて行く目的、故郷への想い……、色々と考えさせられるお話でした。みんながみんな、自分なりの主張を持っていて、だからこそ噛み合わずに対立する。終盤の展開にはかなりもどかしい思いをさせられました。リセットボタンがあるなら迷わず押してしまいたくなるくらい。
 しかし、あらすじには「賢女」としか書かれていないし、表紙の彼女はちょうど帯で隠されている部分にいるので、コーリンが老婆とは思わず、それ以上に彼女のキャラクターに意表を突かれました。シウ、ニナも合わせて、掛け合いや立場の食い違い、理解していく様子は面白く読めました。

肷

「天冥の標I メニー・メニー・シープ(上)(下)」

■感想メモ。
「天冥の標I メニー・メニー・シープ(上)(下)」(小川一水・ハヤカワ文庫JA)
天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)
 西暦2803年、植民星メニー・メニー・シープは入植300周年を迎えようとしていた。しかし臨時総督のユレイン三世は、地中深くに眠る植民船シェパード号の発電炉不調を理由に、植民地全域に配電制限などの弾圧を加えつつあった。そんな状況下、セナーセー市の医師カドムは、“海の一統”のアクリラから緊急の要請を受ける。街に謎の疫病が蔓延しているというのだが…小川一水が満を持して放つ全10巻の新シリーズ開幕篇。

 全10巻の1巻上下巻。
 主人公格のキャラはちゃんといるんですが、彼らや彼らを取り巻く人々、また一見関係の無さそうな人々の行動が、徐々にひとつに繋がっていくのが読んでいて熱くて面白かったです。そういった点では「狭い範囲の話」なのかなぁと思ったり。
 ただ、のんびり読めるのは途中までで、後半に行くにしたがって「うわぁ」とか「ああ…」とか気分が盛り上がったり下降したり忙しくなり、下巻ラストでは(あとがきに書かれていた通り)「ちょ、おいィ!?」と叫ぶどころか呆然としてしまいました。
 本当にこの話は、いったいどこに向かおうとしているんでしょう? 1巻でこれだと2巻ではどんなことになってしまうのやら……。引きが凶悪すぎるので、2巻が待ち遠しくてなりません。

肷

「回帰祭」

■今日読んだ本メモ。
「回帰祭」(小林めぐみ・ハヤカワ文庫JA)
回帰祭 (ハヤカワ文庫JA)
 地球の環境汚染から逃れた避難船ダナルーが不時着してから300年。この星では男女が9:1の割合で誕生していた。16歳でカップリングできない男子は全員復興した地球へ回帰する。秀才少年ライカは都市の謎を調べ回り、勝ち気な少女ヒマリは地球に憧れている。そして地球行きを憂う少年アツはヒマリに一目惚れ。そんな3人が出会った喋るウナギは、ダナルーのある秘密を示唆する――。

 読み進めて行って、あとがきに辿りついて、「えっ!?」と驚いてしまいました。え!?こんなところで終わるの!?という驚きです。もう少し先まで読みたかったのに、いきなりばっさり切られてしまった感じで、不完全燃焼でした。その先はご想像にお任せします、ということなのかもしれませんが……それにしてたって、あとちょっとだけでも未来を見せてくれても良かったのに!
 最初はほぼ接点の無い少年少女たちが、ぶつかったり喧嘩したりしつつ、終盤には3人での不思議な調和(のようなもの)が出来上がっていたのがなかなか楽しかったです。ダナルーのシステムの不気味さ、グロテスクさも印象深い。だからこそ、謎解きと後始末が中途半端に見えてしまったのがもったいないなぁと思いました。

肷

「フリーランチの時代」

■今日読んだ本メモ2。
「フリーランチの時代」(小川一水・ハヤカワ文庫JA)
フリーランチの時代フリーランチの時代
 「私は人類をたいらげたい」――火星やまと基地の隊員4名が体験した、あまりにもあっけないファーストコンタクトを描く表題作、太陽系開拓時代に孤独な宇宙船を駆るニートの日常「Slowlife in Starship」、いつの間にか不死を獲得してしまった人類の戸惑い「千歳の坂も」、そして傑作長編『時砂の王』に秘められた熾烈な闘いを描くスピンオフまで、心優しき人間達のさまざまな”幼年期の終わり”を描く全5篇収録。

 短編集。
 同じハヤカワ文庫から出している短編集「老ヴォールの惑星」よりもあっさりめの話が多かったような印象。全体的に、「あれ、ここで終わり?」という感じです。もうちょっと先が読みたかったなぁ、というもやもやしたものが残ります。
 設定として興味深かったのは「千歳の坂も」。”不死”の定義は、この先技術が進歩していけば、あり得ない話ではないのではないかと思わされる話でした。
 そして一番気に入ったのは「時砂の王」のスピンオフ「アルワラの潮の音」。メッセンジャーたちのその後を思うと、ちょっと切なくなりました。

肷

「天涯の砦」

■今日読んだ本メモ。
「天涯の砦」(小川一水・ハヤカワSFシリーズJコレクション)

地球と月を中継する軌道ステーション<望天>で起こった大事故。虚空へと吹き飛ばされた残骸と月住還船<わかたけ>からなる構造体は漂流を開始する。だが隔離されたわずかな機密区域には生存者がいた――。
壁一枚を隔てた向こうは真空であるという恐怖と戦いつつ、生存の道を探る人々の物語。最初はそれぞれ別々の場所に閉じ込められた状態で、空気ダクトによる声のみの接触から始まります。いったいどうやって助かるのか?全員脱出することができるのか?という漠然とした不安から、登場人物たちの境遇や思いを知るにつれ、どんどん感情移入してしまい、最後には嫌悪感を抱いていた人物にさえ燃えてしまう状態に。とても面白かったです。
しかしこの状況ならカップルのひとつやふたつ成立してもおかしくないんでは……とちょっと思ってしまいました(笑)。ハリウッド映画ならそうなってたかも。そしてそうならなかったのが却って(すっきり終わって)よかったなと思いました。

肷

「時砂の王」

■今日読んだ本メモ。
「時砂の王」(小川一水・ハヤカワ文庫JA)
時砂の王
人類を救うため、2300年後の未来から西暦248年の邪馬台国へとやってきた男の物語。
オーヴィルと彌与(卑弥呼)の絡みは好きなんですが、どうしてもサヤカとのことがちらついてしまってなんだか切ない気持ちにさせられました。もう戻れない時間に残してきてしまった想い出と想い人。邪馬台国へと辿り着くまでのオーヴィルの軌跡が合間に描かれているのですが、そこでは作戦が成功しないことを分かってしまっているので、読んでいてもどかしくてたまりませんでした。だからこそ、最終防衛線である邪馬台国での物語りにはらはらさせられるわけですが……。ラストにほろり。同僚の書いていた物語も上手く伏線として回収されて、とてもいいお話だったと思います。

肷