「森の魔獣に花束を」

■感想メモ。
「森の魔獣に花束を」(小木君人・ガガガ文庫)
森の魔獣に花束を (ガガガ文庫)
 剣と魔法が大きな力として存在する世界。クレヲは絵を描くことだけを生きがいに孤独な日々を過ごしていた。だが、名家に生まれた彼は、跡継ぎになるための試練の旅に出なければならなくなる。禁断の森へ踏み込み、そこで半人半植物の魔獣の少女と出逢う。あっけなく捕まったクレヲは、なんとか気を惹いて助けてもらうが、代わりにペット同然に拘束されてしまった。こうして始まった奇妙な共同生活だったが、クレヲはいつしか安らぎを覚えていく。しかし平穏な日々は長く続かなかった……。人と魔獣の恋を描いた心温まる異色ファンタジー。

 森の中で住んでいた魔獣の少女と、絵を描くことだけが取り柄の気弱な少年が出会い、恋をする…というシンプルなストーリーではありますが、少女の方は人間を餌とするモンスターであること、少年には家出のごたごたがあること、そして少女にアドバイスをする”ホンノー”の存在が、いい味付けになっているなぁと感じました。
 結局何だかんだあっても、最終的には森を出るんだろうな…とか思っていたので、終盤の展開は少し意表を突かれました。ふたりのその後と、国やクレヲの実家のその後の対比が、やや黒かったり苦かったりものを感じさせるものだったのが、個人的には良かったです。

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「人生 第2章」

■感想メモ。
「人生 第2章」(川岸殴魚・ガガガ文庫)
人生 第2章 (ガガガ文庫)
 夏。第二新聞部の赤松勇樹は、部長の二階堂彩香から、人生相談コーナーのメンバーで合宿に行くよう命じられる。しかたなく理系担当の梨乃、文系担当のふみ、体育会系担当のいくみの三人にメールで打診するも、三者三様に断られてしまう。しかし彩香は、第一新聞部の活動に対抗しているようで、夏の海をあきらめない…。友情、貸金、盗用、性欲、勝負のこと。第二新聞部の新コーナーは大反響!みんなの相談に答えるのは、志乃、くみ、よしたかの三人…って、オマエラ誰だよ!?超☆感覚・人生相談2回目!行くの?合宿。

 シリーズ第2弾。
 合宿に本当に行くとは……(笑)。
 1巻同様のゆるい雰囲気でしたが、女の子たちが可愛いのはいいことです。ところどころ笑えるポイントもあり。怪しい民宿のくだりは前作のノリを彷彿とさせました。ライバルに関してはくどいかなぁと思ったものの、今回きりのネタ……ですよね? 対決時のなりふり構わなさは個人的にツボでした。

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「人生」

■感想メモ。
「人生」(川岸殴魚・ガガガ文庫)
人生 (ガガガ文庫)
 九文学園第二新聞部に所属する赤松勇樹は、入部早々に部長の二階堂彩香から、人生相談コーナーの担当を命じられる。生徒たちから寄せられた悩みに答えるのは、理系女子の遠藤梨乃、文系女子の九条ふみ、体育会系の鈴木いくみの三人。三者三様の意見はいつもまとまらずに、とりあえず実践してみることになるのだが……。友達、恋愛、勉強、性癖、将来のこと。あなたのありふれた悩みにバッチリお答え! 超☆感性・人生相談開始!! 

 タイトルが潔すぎると思う人生相談なお話。
 文系・理系・体育会系の3人の女の子たちが、持ち込まれた「人生相談」に対して無茶ぶりな回答をし、それを主人公が何となくまともな回答にまとめる……というのが基本になっているようです。合間には相談と3人の回答だけが載っているミニコーナーを挟み、さくさくと読めます。前作の「邪神マニュアル」ほどネタに切れ味がある感じはないんですが、時々急にツボを突いて来たりするのでなかなかに油断なりません。キャベツ太郎にキャベツ入ってない、とか。
 男1:女3という組み合わせなのに、全然ハーレムっぽくないのが個人的に良かったです。

肷

「きぜんと撤収!!邪神大沼」

■感想メモ。
「きぜんと撤収!!邪神大沼」(川岸欧魚・ガガガ文庫)
きぜんと撤収!! 邪神大沼 8 (ガガガ文庫)
 “おわりに”勇者を倒し、異例のランクアップで「名誉准上級邪神代理補佐風味」となった大沼貴幸。全邪協からはグールCの粛清を求められるが、その身体にまたも異変が!協力を求めた勇者・露都は、勇者グッズのネットオークション販売で忙しく、通信教育黒魔術師の凛は野菜ソムリエに鞍替え中で役に立たず。立花医院へ捜査に潜った姉小路も、モテないのは病気だと逆洗脳されてしまう…。はたして、大オチはつけられるのか!?「マニュアル」からはじまった、大沼くんのイキイキ邪神ライフ。オールキャストでついに“完”。

 シリーズ完結。
 終わってしまうのが淋しいと同時に、8冊も続いたのか凄いなぁという気持ちも。
 ネタ切れにより完結、だそうですが、綺麗にまとまった完結巻でした。オールキャストを謳いつつも、もうすでによく覚えてないキャラとか、無理して出さなくてもいいんでは?と思っちゃうキャラも。それでも最後までこの作品らしさが溢れていて良かったです。今まで酷い扱いだった大沼が報われたのが一番良かったことかも。扱いとしては最後の最後まで「らしい」感じでしたけど(笑)。
 次はいったいどんな作品を書くのだろう?というのが一番気になるところですが、ひとまず、お疲れさまでした!

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「九十九の空傘」

■感想メモ。
「九十九の空傘」(ツカサ・ガガガ文庫)
九十九の空傘 (ガガガ文庫)
 気が付くと、空色の傘を手に朽ち果てた家の中で立ち尽くしていた少女。自分は誰なのか、なぜここにいるのか――少女の記憶は曖昧だ。誰もいない街を彷徨い、ようやく出会った青年・シグ。少女は自分が人間ではなく、モノに宿る「九十九神」だと教えられる。「きっと、お前は傘の九十九神なんだろう」とシグ。そして少女はカサと名付けられる。人間がいなくなった町を舞台に、置き去りにされたカミ=「九十九神」たちが人間の真似事をして暮らす日常系ファンタジー。

 カサとシグの出会い、そしてカサがシグの仕事を手伝うことになるまでが書かれた、いわばプロローグ的なお話。今のところはメインストーリーめいたものも見えないので、短編集として続けられそうなお話しだな、と思いました。ただカサが九十九神たちの想いを成就させていくだけだとパターン化しそうではありますが。個人的にはシグとカサの関係が好みなので、シリーズとして続けていってほしいなと思います。
 設定もお話も派手さはなく地味なんですが、人のいなくなってしまった世界というのは惹かれるものがあります。世界にもキャラクターにもあるはずの背景をもっと知りたいですが、「記憶を持たない」九十九神の設定では難しいでしょうか。だとしたら、ちょっと残念。

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「あえなく昇天!!邪神大沼7」

■感想メモ。
「あえなく昇天!!邪神大沼7」(川岸殴魚・ガガガ文庫)
あえなく昇天!! 邪神大沼7 (ガガガ文庫)
 【はじめに】大沼貴幸の周囲を光が包んでいた。部下のグールたちが昇天したときと同じ、光の柱だ。
 その中をゆっくりと、上昇する。光は天井を突き抜けて、まっすぐに昇っていく――。
 気がつくと大沼は、霧が立ちこめる巨大な河原に横たわっていた。
 「おおぬまよ、しんでしまうとはなさけない……!」って、邪神って死ぬの!? 
 本書はそんな、自宅でのんびり過ごしていたはずが、天狗のかえでの腹パンチにより生死の境を彷徨うことになった主人公について書かれた小説です。
 いざ逝け地獄、大冥界! ボケコメディに、ついてこ~い! 第7弾!

 シリーズ第7弾。
 何だか久しぶりに大沼が主人公ぽかったような気がしました。ナナのために頑張る……あれ、普通に主人公とヒロインのように見えるぞ?と(笑)。大沼のことを気遣っているナナもいいですが、お菓子に釣られちゃう露都も可愛くて良かったです。
 マニュアルのネタもネタ切れもせずよく思いつくなぁと感心してしまったり。「ぽぽぽぽ~ん」は自分の中では既に「懐かしい」ネタ分類になってることに気が付いて微妙に衝撃的だったりとか。他では作戦会議中の図解の畳みかけ攻撃にかなり笑わせてもらいました。本文なしでも笑ってしまう。あれはずるい。

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「キミとは致命的なズレがある」

■感想メモ。
「キミとは致命的なズレがある」(赤月カケル・ガガガ文庫)
キミとは致命的なズレがある (ガガガ文庫)
 海里克也は保健室で目を覚ました。なぜここにいるのか?
 保健医の鏡司によると、階段で転んで気を失っていたらしい。……覚えていない。
 十歳のとき、大きな事故で両親と記憶を失ってしまった克也には、ここ数年の記憶しかない。また記憶が消えてしまったのだろうか。
 「見えないモノが見えてないか?」そんな司の問い掛けにドキリとする。
 ――自販機の陰から伸びる少女の姿態――突如現れ克也を責める不幸の手紙――少女の死の映像と命を狩る指の感触。
 これは幻覚? それとも――?

 第5回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作。
 「主人公の一人称で描かれている」というのが上手に活かされているなぁと感じました。最初に読んだ時は割と普通にささっと読んだのですが、終盤~ラストのおかげでまた最初から読みたくなる、そんな作品。主人公視点では不気味でしかなかった出来事も、ひとつひとつ穴を塞いでいく仕掛けに惹きつけられました。
 ただ、仕掛けとかストーリーを主にしたのか、登場人物のキャラ立てについては薄め……というか、語尾とか口調で個性付けしようとしてるように見えたのはどうかなぁと思いました。特に女性陣。

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「パニッシュメント」

■感想メモ。
「パニッシュメント」(江波光則・ガガガ文庫)
パニッシュメント (ガガガ文庫)
 高校生・郁には何かの拍子に「誰かを殺しそうな顔」をしてしまう瞬間がある。それが新興宗教の教祖をしている父親と関連があるのかどうかは不明……。父親とは長年離れて暮らし、存在を「ないもの」としているが、幼馴染みの女子高生・常磐の母親がその宗教に傾倒していることに対し、本当の事実を告げられない。何も知らず、接してくる常磐に複雑な感情を抱いてしまう郁。一方でクラスメイトの謎めいた占い少女・七瀬がなぜか、アプローチをしかけてくるが、実は、郁と父親に関しての秘密を知っているらしく……『ストレンジボイス』の江波光則が送る、ローリング必至の青春&恋愛模様。

 あらすじでも触れられている「新興宗教の教祖をしている父親」と「その宗教に傾倒している幼なじみの母」というのがどうにも不穏な感じは読む前からしてはいたのですが……。「恋愛模様」とか帯の「怒涛の恋」という言葉は、読み終わった後に見ると思わずツッコミを入れたくなってしまうような内容でした。
 最初は「母が入院したのを期に幼なじみが弁当を作ってくる」なんて微笑ましい雰囲気だったのに、どんどんあらぬ方に転がって行って……。全部投げ捨ててどっかに逃げ出したくなるような、ぐさぐさ突き刺さる痛みにたまらなくなるような、とにかく(表紙イラストを見て)「三角関係の恋愛模様」とか想像してるとかけ離れててびっくりしてしまいます。別の意味でローリングしたくなるような作品でした。

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「むやみに分裂!邪神大沼6」

■感想メモ。
「むやみに分裂!邪神大沼6」(川岸殴魚・ガガガ文庫)
むやみに分裂!! 邪神大沼 6 (ガガガ文庫)
 【はじめに】露都(肩書き・勇者)が生徒会長に就任し、最初の仕事となった文化祭を、副会長として手伝うことになった大沼(肩書き・邪神)。
 銭ゲバ一直線の露都の行動に悩みつつ、帰宅した大沼が全邪協の職員から受け取ったのは『ダメ邪神脱出マニュアル』だった。
 え? 「初心者」より格が落ちてる――? 
 本書はそんな「ダメ邪神」に降格後さらに、男と女とネジに分裂してしまった主人公の日常について書かれた小説です。再度の分裂を回避し、はやく一体に戻りましょう!
 文化祭でにぎわう学園は大混乱!? とりまボケコメディ第6弾!

 シリーズ第6弾。
 表紙とサブタイトル?の「もし世界一わかりやすいマネージャーがさおだけ屋のノートを読んだら」だけでもう十分すぎるほどの出オチのような気がしました。内容的にもKAGEROUとか、今じゃないとできないネタ満載。しかしながら私は「もしドラ」も「KAGEROU」も詳しい内容を知らないので、どの程度元ネタに沿ってるのか沿ってないのかわからなかったのはちょっと残念でした。池上氏の授業のパロはあれで怒られないのかと思ったりしましたが(笑)。不思議と一番ツボにはまったのは、文化祭の出し物投票でした。あの畳みかけるようなしつこい繰り返しがヒット。
 全体的にぐだぐだしてますが、回収する伏線は回収して、何だか良い話のような終わり方だったのもまた不思議。復活した彼はいったいどうするんでしょう……。

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「時間商人  トキタの死期、カナタの思恋」

■感想メモ。
「時間商人  トキタの死期、カナタの思恋」(水市恵・ガガガ文庫)
時間商人 トキタの死期、カナタの思恋 (ガガガ文庫 み 1-8)
 時間商人トキタは、とある都会の片隅で不老不死の時間を売っている―。トキタと契約すれば、顧客は「10年間限定の不老不死」を手にすることができる。トキタ自身も不老不死で、助手カナタとともに永らく時間商人を営み続けていた。そんなトキタに時間盗賊暗躍の一報が届く。人間の寿命を軽々と奪う、時間盗賊の次なる狙いはトキタの寿命だった!カナタの姉、ハルカの協力のもとで自衛につとめるトキタだが、均衡はあっさり破られる。カナタ誘拐という、最悪の形で。人質交換の条件を前にしたトキタの選択は―。

 シリーズ第4弾。
 今回は時間商人側にスポットが当てられていて、連作短編と言うよりは長編の印象でした。客側の事情は入って来ず、どんでん返しも捻りも少なめ。ただ、カナタ視点の描写は可愛いし、トキタの内心を知れたのは良かったです。あと、カナタ寄りの心情になってしまうせいか、寿命を使ったビジネスはあまりいいこととは思えませんでしたけど……。加えて、いつもより「寿命」の扱い方が軽いかな、というのが気になりました。
 綺麗にまとまったラストでしたが、最後の一文を読むとシリーズ完結とも受け取れてしまいます。もうちょっと続けて欲しいと思うのですが、続編が出ないとしたら残念。
 

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