「HAPPY DATH DAY 自殺屋ヨミジと殺人鬼ドリアン」

■感想メモ。
「HAPPY DATH DAY自殺屋ヨミジと殺人鬼ドリアン」(望公太・GA文庫)
Happy Death Day 自殺屋ヨミジと殺人鬼ドリアン (GA文庫)
 俺の名は紫藤。シドと呼んでくれ。ただ今十九歳。借金もなく、失恋したり、イジメにあっているわけでもなく、まあ楽しく生きている。でも俺は死ぬ。俺はもう完成しているからだ。じゃあ、どう死のう?なんて考えていた俺は、最高に愉快で最悪に頼もしい奴らに出会った。『自殺屋ヨミジ』と『殺人鬼ドリアン』十万円を払えば、一週間後に理想的な死を用意してくれるという。その間にどうせ気が変わるだろうって?安心してくれ、俺は必ず死ぬから。人生にとどめを刺しにいく、俺の最期の七日間―その全てがここにある。

 第3回GA文庫大賞優秀賞受賞作。
 200pもない薄い本です。主人公シドの語りの軽妙さも相まって、さっくり読めます。
 「死ぬまでの1週間」のお話なのですが、悩んだりためらったりすることはほぼなく、一直線。本当に、「死ぬまでの1週間」を書いただけ。そのストレートさは潔いの一言です。主人公の考え方に賛同できるかどうかは別として。えらくあっさりした話だったなぁというのが率直な感想です。
 驚いたのはこれが1巻完結作品ではなく続編があるらしいということ。そこへの持って行き方は上手いなと思いました。

肷

「法石姫―クロイハナトナクシタナマエ―」

■感想メモ。
「法石姫―クロイハナトナクシタナマエ―」(大迫純一・GA文庫)
法石姫-クロイハナトナクシタナマエ- (GA文庫)
 欺哦。
それはすべてを破壊し、無限に増殖する異次元からの侵略者。
街を、人を、壊し尽くし破壊しつくす“それ”に幼なじみの少女が貫かれたそのとき、少年はひとつの決意を固める。
「俺と組め! 桜羅!!」
「大樹……。あなたは判ってない。私と繋がるということは……」
「うるせえ!!」
説明を聞いてる余裕なんて、ない!
「俺の全部と引き換えにしてでも、芹菜を助けるんだ!」
 ヒーローを追い求め続けた大迫純一の、これが究極!
-本当のヒーローは、ここにいる-

 昨年亡くなられた大迫純一氏の最後の作品。ポリフォニカのブラックシリーズもそうでしたが、亡くなった後も刊行されている作品を読むたびに、もう続きや新作が読めないことが残念でなりません。初めて読んだ大迫作品は富士見ミステリー文庫でしたが、何だか遠い昔のようです。
 今作については、作者らしい熱い作品だったなぁと。すべてを捨てても、守りたいものがある。痛みを抱えても立ちあがる孤高のヒーロー。それがすべて。余計なものの無い真っ直ぐさが胸をうちます。もうこの話の行方を知ることはできませんが、きっとどんな困難にも彼は立ち向かっていくだろう。そう思える力がありました。

肷

「神曲奏界ポリフォニカ インタルード・ブラック」

■感想メモ。
「神曲奏界ポリフォニカ インタルード・ブラック」(大迫純一・GA文庫)
神曲奏界ポリフォニカ インタルード・ブラック (GA文庫)
 「ありがとう」
だが、マナガは首を振った。
「違うさ。私とお前さん、二人だから出来るんだ」
マティアは、少し考えて、それから頷いた。
「うん、チーム・ワークだ」
「そうだ。チーム・ワークだ」
マティアは顔を上げると、かすかにマナガに向って微笑んだ――。
「神曲奏界ポリフォニカ まぁぶる」シリーズ掲載の作品に、二人が精霊警官として歩み始め、チームとして手探りの状態だったときの初々しいエピソードを描いた未発表短編 「えくすとら・ぶらっく」など5作を収録してお贈りする、珠玉の短編集!

 シリーズ最終巻。
 作者がお亡くなりになったのは知っていましたが、これでもう新刊は出ないんだなぁと思うと淋しさでいっぱいです。本編は一区切り付いていたものの、マナガやマティアの活躍をもっと見たかったのが正直なところ。それでも、未公開の短編が読めたのは良かったです。
 「まぁぶる」「まぁぶる2」は既読だったので、それ以外の2編は今回初めて読みました。「えくすとら・ぶらっく」での初々しくどこかぎこちなさのある2人が何だか少し感慨深い。既読の短編も、初出時にはなかった挿絵があったりしてたっぷり詰まった愛を感じました。

肷

「桐咲キセキのキセキ」

■感想メモ。
「桐咲キセキのキセキ」(ろくごまるに・GA文庫)
桐咲キセキのキセキ (GA文庫)
 月光の下、どこまでも続くラベンダー畑。白いワンピース姿の幼い少女。その少女を抱きしめたとき、僕はようやく世界と噛み合った―。桐咲キセキ。やっと出会えた翠色の瞳の美少女。彼女は今、僕の前にチェーンソーを持って佇んでいる。桐咲一族の次の当主を決めるための、不可解かつ複紙怪奇な闘い―メデュース―に勝ち残り、アルカナムの秘密を知るために。病院に幽閉された母の病いの原因を知るために。そして僕―遊撃部長K―は、メデュースにおけるキセキのパートナーになることを選択した。謎に満ちた世界をひもとけ!“非”世界ファンタジー遂に開幕。

 シリーズ第1弾。
 派手にドンぱちやる話かと思ったら、結構地味でした。でもカード勝負での相手の手の読みあいと泥沼にはまって行く様が面白かったです。2巻以降もちょっとひねった勝負が続いて行くのでしょうか。
 キャラはそれなりの人数出ていたものの、顔見せだけだった人もちらほら。メインキャラでは夢月が一番キャラ立ちしてたなぁと思いました。最初はちょっと鬱陶しかったのに、次第に彼女のペースにつられていって、いないと淋しくなってしまう不思議な存在感。

肷

「ありすとBOBO2 -下町決戦兵器マスラオ- 」

■感想メモ。
「ありすとBOBO2 -下町決戦兵器マスラオ- 」(川崎康宏・GA文庫)
ありすとBOBO2 -下町決戦兵器マスラオ- (GA文庫)
 ある日、工場見学に来ていたアリスたちは、見学先の町工場でマスラオと名付けられたロボットを発見。「すごーい!かっこいい!」「そうじゃろうそうじゃろう」工場の社長は鼻高々。「お嬢ちゃんなら大負けに負けて、一億円で造ってやるぞ」だがそのロボットを奪取すべく、遺伝子操作されたアメリカの“フルチン”&“超デブ”工作員のコンビが襲来、さらには自衛隊やらシシドーやらが入り乱れての大・騒・動!そのころボーボーは、買ってきた電動シシオドシを前になごんでいた。「見てるだけで涼しくなるね」はたしてどうなる、この事件。

 シリーズ第2弾。
 相変わらずぐだぐだ~っと。メインはおじいちゃんVS工作員で、その合間をシシドーが走り回っている感じ。アリスも奮闘していましたが……、ヒロインのはずなのにインパクトで負けてしまっているような。進展する気配があんまりしない恋愛方面は、別方向にフラグが立ちつつあるのではと思ったりしました。
 読み進めていって、いつボーボーが参戦してくるんだろう……と思ったら、最後の最後に美味しいとこ総どりで「さすが!」でした。でも3巻があればまたバトルが見たいなぁ。
 

肷

「神曲奏界ポリフォニカ ダン・サリエルと真夜中のカルテット」

■感想メモ。
「神曲奏界ポリフォニカ ダン・サリエルと真夜中のカルテット」(あざの耕平・GA文庫)
神曲奏界ポリフォニカ ダン・サリエルと真夜中のカルテット (GA文庫)
 天才ダン・サリエル、引退の危機!? 傲岸不遜で、唯我独尊な天才音楽家ダン・サリエル。しかし、彼に未曾有の危機が訪れていた。それは――スランプ。過去にない大・大・大スランプから彼は脱出できるのか? それとも、引退するしかないのか――!? 傲岸不遜で傍若無人、唯我独尊を地でゆく――そんな俺様な性格のサリエルに、過去最大級のスランプが訪れていた。 それは、サリエルの扱いになれているはずの契約精霊モモですら手に余る程の大・大・大スランプ。 誰の言葉も耳に入らず、慰めも届かない。この荒れようは、普段はその才能を尊敬し彼に憧れているアマディアでさえ引くほどの酷さであった。 果たしてこの事態の顛末は――!?

 シリーズ第3弾。
 今回も安定の面白さ。なのにここで一区切り、とは……。短編連作形式だし、もっともっと続けられそうだし読みたいのですが、残念でなりません。
 サリエルがスランプに陥る話は、あまりのはっちゃけっぷりに笑っていいのやら分からなくなり、でも何だかんだで周囲の人間(+精霊)には恵まれているんだなぁとしみじみ。心が温かくなった後のオチには吹きましたが(笑)。
 そして表題作は今までのキャラ全員登場に加えて1巻を思い出させる内容でじんわりきました。やっぱりこのシリーズはいいですね。またいつか続編でないかな……と気長に待っていようかなと思います。

肷

「ありすとBOBO -猫とマグロと恋心-」

■感想メモ。
「ありすとBOBO -猫とマグロと恋心-」(川崎康宏・GA文庫)
ありすとBOBO -猫とマグロと恋心- (GA文庫)
 魚屋とマフィアがマグロの覇権を争う中、サウスエンドの狂犬女子高生・狗頭蘭子は別のことで真剣に頭を悩ませていた。―同級生の鰯田君とどうすれば仲良くなれるか―ということをだ。アリスの保護者、カナディアングリズリー(日本語堪能)のボーボーは、こう感想を漏らした。「アリスも恋する雌なんだねぇ…」「雌って言うな!!」マグロを巡る珍騒動とアリスの恋の行方はいかに。

 かつて電撃文庫で出された「Alice」のまさかの続編。レーベルもタイトルも挿絵も変えて、それでもやっぱりクマはクマ。クマがかっこいいのも、ヒロインが割と蚊帳の外なのも、設定がカオスなのも相変わらずでした。合う人には合うけれど、合わない人にはさっぱり合わない作品だと思います。
 しかしアリスの片思い相手くらいはもう少し出番をあげても良かったんではないかと……。次で水着で海!になるんでしょうか。そのときになってもやっぱり描写が薄めになってしまう気がしないでもないです。
 まぁクマがかっこよければそれでよし、です。

肷

「オルキヌス4 稲朽深弦の調停生活」

■感想メモ。
「オルキヌス4 稲朽深弦の調停生活」(鳥羽徹・GA文庫)
オルキヌス4 稲朽深弦の調停生活 (GA文庫)
 秋永壱里、帰還―!?調停員協会による壱里調停員の失踪を疑う追及を、のらりくらりとかわし続け、疲れ果てて事務所に帰り着いた深弦。そんな彼女の前に現れたのは、秋永壱里調停員その人だった!?「今までどこに居たんですか?誰にも行き先を告げずにどこかへ行っちゃうなんて」「残念だけど、それには答えられない。なぜなら私は記憶喪失だからね!」「え、ギャグ?」「いやいや、マジでマジで」懸案事項もこれで解決かと思いきや、壱里の挙動はどこかおかしくて…?はたして深弦の調停生活は、どうなってしまうのか。

 シリーズ完結。
 最終巻だというのは知っていたのですが、それにしたって本の薄さと、200p弱で終わってしまったのには驚かされました(後のページには読み切りが2本載ってます)。これまでに調停を通じて信頼関係を築いてきたオルカたちが総動員して深弦を助けてくれる展開はとても良かったのですが……。続けてマンネリ化するよりはすぱっと終わった方が良かったのかもしれませんが、ぐだぐだなボケツッコミはもう少し見ていたかったなと惜しい気持ちでいっぱいになりました。
 短編は2本目の方が深弦らしい屁理屈全開で(1本目もセシルが屁理屈全開ですが)楽しかったです。

肷

「悠久のアンダンテ -荒野とナツメの物語- 」

■感想メモ。
「悠久のアンダンテ -荒野とナツメの物語- 」(明日香々一・GA文庫)
悠久のアンダンテ -荒野とナツメの物語- (GA文庫)
 隊商が全滅した夜、幼い少女はただ一人生き残った。命を助けてくれたのは、巨大な剣を手にした青年アベル。しかし、人間では太刀打ちできない生物―蟲をたやすく屠る彼との邂逅は短いものにすぎなかった。過酷な荒野の旅を辛うじて生き残ったナツメはやがて成長し、再びアベルと出会う。だが、彼女の前に現れたのは、あの夜と寸分も変わっていない青年だった。記憶もなく老いることもなく、ただひとつ残された使命感とともに、ひたすら荒野を巡り蟲を狩り続けるアベル。彼に秘められた謎とは一体なんなのか。そしてアベルとの再会が、ナツメにもたらすものとは―。

 ものすごく久しぶりに名前を見た作者の作品だったので、読んでみました。
 富士見ファンタジアで出していた作品とイメージが重なる部分もあり、こういう話を書くのが好きなんだろうなぁと思ったり。
 1冊できれいに完結していますが、アベルとナツメの関係はもう少しじっくり丁寧に書いてほしかったです。結ばれるのに少し唐突さが……。唐突と言えば後半の展開もそうで、出てくるキャラについての描写が足りないので重要さがぴんと来なかったり、見せて欲しいところをがっつり削られているので、不完全燃焼でした。上下巻くらいだったらちょうどよいエピソードだったかもしれません。

肷

「オルキヌス3 稲朽深弦の調停生活」

■感想メモ。
「オルキヌス3 稲朽深弦の調停生活」(鳥羽徹・GA文庫)
オルキヌス3 稲朽深弦の調停生活 (GA文庫 と 2-3)
 「あのな、今ちょうど良い話をしてたんだから空気読めよ…」「え、空気?空気は空気としか読めないでしょ?何言ってるの?」「空気読めよー!」調停員としての実績を順調に積み上げつつある深弦は、さらなる実績をモノにするべく、オルキヌス島のさらに奥地へと脚を伸ばす。そこにはオルカ達が作った街があるというのだが、待っていたのはやっぱり予想の斜め上をいく変な施設に変なオルカ。おまけにセシルの上司だというナオミ・ベル調停員まで現れて…!?

 シリーズ第3弾。表紙から大団円っぽい雰囲気を感じましたが4巻もでるようです。そしてすごく表紙&カラー口絵詐欺でした……(笑)。
 新しいオルカもわんさか出てますが、ボケ役はみんな同種のボケに見えてしまいます。オルカの基本はああいうだら~っとした感じの漫才なんでしょうか。それにしてもわんこ可愛い。
 丁寧に伏線を回収していって打開策を練り上げる様は読んでいて気持ちのいいところです。結果がぐだぐだになっちゃったのは当初の目的もあるとはいえ……。にしても、女性キャラばかりが増えていきますね(人間サイド)。個人的にはもう少しバランスとってもいいんではないかと思いますが。

肷