「キノの旅XVI -the Beautiful World-」

■感想メモ。
「キノの旅XVI -the Beautiful World-」(時雨沢恵一・電撃文庫)
キノの旅 XVI the Beautiful World (電撃文庫)
 「旅人さんですね? あの国に行こうとしているんですね? でも、不可能です。──絶対に入国なんてできませんよ!」
 城壁の前でキノとエルメスが聞いたのは、そんな叫びだった。
 キノとエルメスは、トラックの間を通り抜けて、一つのテントに案内された。そこは作戦司令室になっていた。大きな机が置かれ、国の地図が置かれ、男達がいた。制服から、軍隊の指揮官や、警察の隊長に見える。鍛え上げられた逞しい男達だが、その顔は一様に晴れない。「えっと、葬式現場?」エルメスが、開口一番そんなことを言って、「それよりもっと悪い」一人の男が、静かに言い返した。(「死人達の国」より)など全10話収録。『キノの旅』1年ぶりの新刊。『フォトの日々も』収録。

 シリーズ第16弾。
 フォトの物語もレギュラー化したのでしょうか。色んなキャラたちのお話が読めるのは楽しいですが、キノとエルメスの出番が減ればそれはそれで淋しいものがあったりもします。
 今回のお気に入りは「恋文の国」。少しのボタンの掛け違え。もし彼や彼女が告白する勇気さえあれば、また違った未来=現在になっていたのかも。そう思わずにはいられません。他ではフォトの日々「残されたもの」が切なくぐっとくる、でもあたたかなものが残るお話で良かったです。

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「ハレルヤ・ヴァンプ」

■感想メモ。
「ハレルヤ・ヴァンプ」(山口幸三郎・電撃文庫)
ハレルヤ・ヴァンプ (電撃文庫 や 6-4)
 吸血鬼狩り(ハンター)見習いの高校生晴夜は、ある夜道に迷った少女テアを助ける。だがその翌日、彼は仲間と共に吸血鬼に襲われ、命を奪われてしまう──。
 次に目覚めた時、晴夜は無傷だった。不審に思う晴夜に、テアは告げる。「この牙で晴夜の体内にわたしの血を与えたわけです」
 この日から、吸血鬼狩りでありながら吸血鬼となった晴夜と、仲間からも人間からも追われる吸血姫テアとの奇妙な主従関係が始まった──!

 シリーズ第1弾。
 どこかで見たような設定・ネタが多く、この作品ならではの個性・目新しさがあんまり感じられないなーと思いました。
 あと、登場人物の会話にノリツッコミが多すぎるのと地の文でツッコミ入れたり文章が崩れすぎるのが引っ掛かりました。そのせいで、全体的に締まりに欠けるなぁと。キャラの行動にもわりと突っ込みどころが多いような(生徒会の面々はそれでいいのか、とか)。
 主人公を含む幼馴染み4人の立ち位置の変化に関しては、2巻以降でどのように絡み、対立し、変化していくのかなというのは気になるところではありました。

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「天鏡のアルデラミン―ねじ巻き精霊戦記」

■感想メモ。
「天鏡のアルデラミン―ねじ巻き精霊戦記」(宇野朴人・電撃文庫)
天鏡のアルデラミン―ねじ巻き精霊戦記 (電撃文庫 う 4-4)
  隣接するキオカ共和国と戦争状態にある大国、カトヴァーナ帝国。その一角に、とある事情で嫌々、高等士官試験を受験しようとしている、一人の少年がいた。彼の名はイクタ。
 戦争嫌いで怠け者で女好き。そんなイクタが、のちに名将とまで呼ばれる軍人になろうとは、誰も予想していなかった……。
 戦乱渦巻く世界を、卓越した才で生き抜くイクタ。その波瀾万丈の半生を描く、壮大なファンタジー戦記、いよいよ開幕!

 シリーズ第1弾。
 「怠け者の少年がのちの名将に」という帯の文句で既にわくわく。「怠け者だが怠けるための苦労は厭わない」主人公の姿勢は面白いです。そんな彼の言動や作戦に周囲が振り回されるのも見ていて楽しい。後半の演習なんて、嫌な性格のキャラが相手なので溜飲が下がりますね。テンポよく進んでいって、最後の最後、皇女様の爆弾発言で次回へ引くのも実に上手いなと思いました。いったいどうやって、目的を実現させるのか。過程をじっくり見せてくれたらいいなーと思いつつ。
 主人公の周囲のキャラは個性はまだそんなに濃くは無いものの、役割分担出来てるのがいい感じ。でも個人的には不倫相手の娘であるスーヤ一押しです。怒ったり戸惑ったりしてる姿がとても可愛い。

肷

「楽聖少女」

■感想メモ。
「楽聖少女」(杉井光・電撃文庫)
楽聖少女 (電撃文庫)
  高校二年の夏休み、僕は悪魔メフィストフェレスと名乗る奇妙な女によって、見知らぬ世界へ連れ去られてしまう。
 そこは二百年前の楽都ウィーン……のはずが、電話も戦車も飛行船も魔物も飛び交う異世界!?
「あなた様には、ゲーテ様の新しい身体になっていただきます」
 女悪魔の手によって、大作家ゲーテになりかわり、執筆をさせられることになってしまった僕は、現代日本に戻る方法を探しているうちに、一人の少女と出逢う。稀代の天才音楽家である彼女の驚くべき名は──
 魔術と音楽が入り乱れるめくるめく絢爛ゴシック・ファンタジー、開幕!

 とりあえず作者はハイドンに謝るべき。まぁ他にも「どうなんだろうこれ」的な扱いのキャラは何人かいましたが……。
 主人公もヒロインも、同作者の他作品のキャラと似たり寄ったりな感じで、その点については目新しさはなかったものの、安定感はありました。
 音楽に詳しくなくても知っているような有名な人物たちとの関わりも、なかなか楽しかったです。特にサリエリは映画「アマデウス」のイメージが強すぎる、という点については、そうだよなーと深く頷いてしまったり。
 しかしながら、後半の魔術とか戦闘とかは余計なように感じられました。総じてちょっと惜しい印象の作品でした。

肷

「ミニッツ~1分間の絶対時間~」

■感想メモ。
「ミニッツ~1分間の絶対時間~」(乙野四文字・電撃文庫)
ミニッツ―一分間の絶対時間 (電撃文庫)
 私立穂尾付学園高校一年一組、相上櫻。一分間だけ相手の心を読める『ミニッツ』能力の持ち主。“一年生にしてこの学園の生徒会長になる”―そんな大それた野望を持つ櫻は、この『絶対時間』を利用し、クラス内で“頼れるが妬まれない、愛嬌のある委員長”という絶妙な立場を演じていた。しかしある日、ふとした事がきっかけで、自身の秘密を生徒会副会長の琴宮遙に知られてしまう。櫻は、遙の弱みを握り返すため、彼女が提案する心理ゲーム『馬鹿と天才ゲーム』に挑む―。第18回電撃小説大賞“選考委員奨励賞”受賞!トリックとロジックが交差する、学園騙し合いラブストーリー。

 もっともっとがっつり駆け引きを読ませてくれるかと期待してたのに、それほどでもなかったです。
 カラー見開きまで使ってる「馬鹿と天才ゲーム」は、「え、もおう終わり?」とあっけなくて肩すかし。主人公の詰めの甘さも気になったし、他のキャラもあまり良い感じのしないキャラが多くて、そちらの方が印象に残ってしまいました。主なキャラのうち、いてもいなくてもいいようなキャラがいるのはシリーズ化前提なのかなぁと思ったり。
 それでも前半は腹の探り合いなどは結構楽しく読めたんですが、後半になると思わぬ方向へ迷走しはじめて……。前半から中盤くらいまでのノリで最後まで突っ走ってくれた方がまとまりがあって良かったと思います。

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「オズのダイヤ使い」

■感想メモ。
「オズのダイヤ使い」(末羽瑛・電撃文庫)
オズのダイヤ使い (電撃文庫)
 時は『宝石大量発掘時代』―宝石がその価値を失った世界で「世界の心臓」と呼ばれる莫大なエネルギーを秘めた超巨大な宝石が発掘される。ワールドハートの社長ホープスは、その発見により世界の半分を手中に収めることとなった。数年後―かつてはワールドハートに所属し、七大傑作の一つ「ライトイーブン」と呼ばれる巨大なチェーンソーを使って「世界の心臓」をカットした最後の宝石職人オスカー・オズワルド。彼は親友の形見である人型重機・Dランページを駆り、親友の仇を探す復讐の旅を送っていた。そんなオズのもとに、「遊石民」だという謎の美少女ロシェリアとアンドロイドの少女エネットが現れ…。

 主人公が大人、職業が宝石職人(カット専門)というのは目新しく感じましたが、ストーリーの方はベタで、分かりやすいけれど尖った部分がない感じ。文章も読みやすいんですが、感情の起伏がちょっと伝わりにくいなと思ったりしました。特に主人公の復讐関連なんですけど……親友との過去シーンでの絡みがあまり出ないので、思いの深さがいまひとつピンと来ませんでした。
 ヒロイン姉妹は姉より妹の方が可愛かったけれど、個人的に好みなのはトリガーハッピーな彼女。あとストーリーには関係ないですが、「ロボットアニメオタク」がいるほどロボットアニメが放映されている世界のようには見えなかったのがちょっと気になりました。
 

肷

「カミオロシ弐 人形供養の儀」

■感想メモ。
「カミオロシ弐 人形供養の儀」(御堂彰彦・電撃文庫)
カミオロシ〈2〉人形供養の儀 (電撃文庫)
 人形が持ち主の下に帰ってくる。生徒たちの間で囁かれる噂。玖流は同級生の皐月から人形供養について相談を受ける。燃えるゴミの日にでも出しておけと、玖流は取り合わなかったが、皐月は二階から転落。異様に人形に怯えているという。玉響神社―地元では人形供養で知られた古社である。結局、皐月は供養に訪れたはずなのだが。事故だと切り捨てる玖流に、神社に問題があるのではと憤る美古都。美古都に無理やりお供を命ぜられた玖流は渋々神社へと向かうのだった。神社の説明に不審点はなかった。だが、何か違和感を覚える。そんな玖流たちを待っていたのは皐月の死だった。何かあると探りだした玖流と美古都は、恐るべき秘密へと辿りつくのだが。

 シリーズ第2弾。
 あれ今回は死者少なかったなーと思ってしまった私は色々とダメかもしれません。
 前回よりはストーリーがスマートというか分かりやすかったかなという印象。だからといってホラー色が薄れているわけではなく、やはり人形が家を訪ねてくるのは恐怖を感じるものです。それにしてもこの学校、シリーズ終わるまでに何人生徒が生き残るんでしょうか……。
 玖流と美古都は相変わらず、というか同じクラスになっちゃって。でも玖流の鈍感っぷりというかスルーっぷりを見るに、ふたりのやり取りは急激には変わらなさそうかなぁと。会話しようと頑張ってる女の子たちが気の毒すぎる……。
 二つのものを天秤にかけてどちらを選ぶか。今回はさくっと選んでましたけど、「選べない」2択を突き付けられる日もそう遠くないような気がしました。

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「ようこそ、フェアリーズ・インへ!」

■感想メモ。
「ようこそ、フェアリーズ・インへ!」(小河正岳・電撃文庫)
ようこそ、フェアリーズ・インへ! (電撃文庫 お)
 さえない駆け出し冒険者のラウル。彼が居候している宿屋の女将が病気で倒れてしまう。ツケをためても許してくれていた女将がいなくなり不安だった彼だが、新しくやってきた女将はびっくりするぐらい純粋で美しい少女だった。その少女―ミリーは魔法学院に通う才媛、家事も万能、人を疑うことを知らないきれいな心の持ち主ときている。ラウルが鼻の下を伸ばさないわけがない。しかも、本来なら相手にされないはずのラウルのことをミリーが、偉大な冒険者と勘違いし!?魔王も倒さず世界も救わない、日常ほんわか冒険ファンタジー。

 「魔王も倒さず世界も救わない」という冒険者のほんわかした日常……というには、主人公ががつがつしすぎている上に実力の伴わない言動が多すぎるように思いました。ほんわかしたくてもほんわかできないのは主人公のダメっぷりが一番の原因のような気がします。まったく落ち着かない。女の子たちは可愛いんですけどねー。
 あと個人的に気になったのはヤシャフ族は果たしてあんな慣習があって一族として成り立っているのかということと、集落の年代構成はどうなっているんだろうということ。エルに課せられた目標が無茶苦茶すぎるだけなのかもしれませんけど。皆ああいう内容なら、一族に戻れない人が続出のような……。

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「乙女ゲーの攻略対象になりました…。」

■感想メモ。
「乙女ゲーの攻略対象になりました…。」(秋目人・電撃文庫)
乙女ゲーの攻略対象になりました…。 (電撃文庫)
 なぜか乙女ゲームの世界に放り込まれた、俺。しかも攻略対象になってしまったようだ。てことは、もしや美少女たちにアタックされまくり!?ウヒョ。と喜んでいたのもつかのま、そうそう都合のいい話はないようで。どうやら攻略されると、俺の死亡ルートに突入するかもしれず…。死の恐怖におびえる中、誰もが憧れる美少女たちが、俺を落とそうと次々やってくるのだった。美少女か、命か。どちらを取るべきなのか?それはもちろん―。乙女ゲームという名の、ちょっぴり変わったデスゲーム・ラブコメ。

 乙女ゲーの世界に入り込んで攻略対象キャラになっちゃったけど、メインヒロインに攻略されたら個別ルートはデッドエンド有。死亡回避のためフラグをへし折らなければ!という状況が面白かったです。他の女性キャラに比べ、遭遇すら回避されるので出番の少ないメインヒロイン・乙女は空気みたいなキャラだなぁと思ったら「乙女ゲー」主人公ならやむなしと思える理由があって妙に納得。個人的には桜妹が可愛いとか、金髪エンドも楽しそう、とか思ったりもしましたが。実際の乙女ゲーとしたら、桜兄ルートとかどうなるんだろうという興味も。二巻は出るみたいなので、次は男性陣ももっと絡んできて欲しいです。特にどこら辺が「ヒッキー」なのか分からない彼。
 どういう風な着地を目指す話なのか分かりませんが、とりあえず「騎士プ」の人はどんな人か明かされると良いなぁと思いつつ。

肷

「バッカーノ!1711 Whitesmile」

■感想メモ。
「バッカーノ!1711 Whitesmile」(成田良悟・電撃文庫)
バッカーノ!1711―Whitesmile (電撃文庫)
 1711年、彼らはついに海に出る。新大陸に向け―。それぞれの心の中に吹き荒れる風を受けて―。マイザー・アヴァーロは探求の風。セラード・クェーツは野心の風。ヴィクター・タルボットは責務の風。ベグ・ガロットは研究心の風。東郷田九郎とザンクは義侠の風。グレットとシルヴィは逃避の風。ナイルは恩義の風。チェスは他人の風に吹き流されて…。多くの錬金術師が大海原へと旅立つ中、失意のヒューイ・ラフォレットは―。『不死の酒』を巡る馬鹿騒ぎ、“始まりの物語”の結末は―。中世を舞台にした異色作第3弾。

 1700年代を舞台にしたシリーズの完結編。錬金術師たちがアドウェナ・アウィス号に乗るまでの物語。
 誰が船に乗るのかというのは分かっていたものの、だいぶ紆余曲折あった感じです。特にヴィクターとか(笑)。そんなに面識なかった間柄のキャラもいたのは結構意外な感じでした。フェルメートのやりたい放題で終わるのでは……というのがひっくり返されたのが良かったです。すっきり。エルマーは最強ですね!
 後に引っ張る伏線も色々あるのに、他の作品を間に挟んで、バッカーノの続刊がしばらく出ないというのがひたすら残念です。あと2冊、早めに読みたいような、シリーズが終わってしまって欲しくないような、複雑な気持ちもありますが……。

肷