「ロゥド・オブ・デュラハン」

■感想メモ。
「ロゥド・オブ・デュラハン」(紫藤ケイ・このライトノベルがすごい!文庫)
ロゥド・オブ・デュラハン (このライトノベルがすごい! 文庫)
 領姫の不可解な死の真相を追う傭兵アルフォンスは、死体を操る死術師と対峙し窮地に陥ったところを、白銀の髪の女に救われる。彼女の者の名はリィゼロット。永き時を生き、死の運命を弄ぶ者たちを狩る、精霊デュラハンの一人。漆黒の鎧を身に纏い、純白の大剣を振るいながら、彼女は不自然に歪められた命を狩りつづける。茫洋としたまなざしに、深い悲しみをたたえながら――。

 第3回このライトノベルがすごい!大賞・大賞受賞作。
 血みどろで人死にも多く殺伐としているものの、文章のおかげか割とさらっと読めました。1冊で綺麗にまとまっているのは好感が持てますが、その分、ストーリーを駆け足かつコンパクトにまとめてしまった感も。特に、因縁の相手の退場は、ここまで引っ張ってきてそんなにあっさり?とちょっと肩すかし。
 しかしながら、空気気味だったアルフォンスが盛り返す終盤からラストにかけての展開は希望のあるもので、読後感は良好でした。これでもうちょっと、濃い目に掘り下げがあればもっと良かったのですが。

肷

「絵画の住人」

■感想メモ。
「絵画の住人」(秋目人・メディアワークス文庫)
絵画の住人 (メディアワークス文庫)
 国分寺駅から徒歩数分のところに、隠れ家のような画廊がある。名画の複製ばかりが飾られている、その小さな画廊には、ある特別な秘密が隠されているらしく―。高校を中退し、バイトで食いつなぐ諌早佑真は、ある日、美しい少女に導かれ、AOKI画廊へと足を踏み入れる。絵画には興味のない彼だったが、画廊のオーナーから頼まれ、雇われ画廊主を務めることに。しかし、働きはじめた佑真は、すぐあることに気づく。―この画廊の絵、生きているんじゃないか…。

 絵画の中から現れる物や人物たち。彼ら彼女らに主人公が振り回される様はどこか微笑ましいです。次はどんな絵から何が飛び出すのか?そういった楽しみもあります。
 題材となった絵は有名なものが多く、その説明も知っているものあり知らないものあり……ですが、説明の仕方が少々こなれてないなぁと感じる部分も。二章から四章の末には登場した絵画が掲載されていますが、モノクロなので分かり辛いのが惜しい。
 主人公が画廊を訪れ、画廊主となるまでの1週間の物語。続編をにおわすラストになっているので、続きが読めると良いなぁと思いつつ。

肷

「キノの旅XVI -the Beautiful World-」

■感想メモ。
「キノの旅XVI -the Beautiful World-」(時雨沢恵一・電撃文庫)
キノの旅 XVI the Beautiful World (電撃文庫)
 「旅人さんですね? あの国に行こうとしているんですね? でも、不可能です。──絶対に入国なんてできませんよ!」
 城壁の前でキノとエルメスが聞いたのは、そんな叫びだった。
 キノとエルメスは、トラックの間を通り抜けて、一つのテントに案内された。そこは作戦司令室になっていた。大きな机が置かれ、国の地図が置かれ、男達がいた。制服から、軍隊の指揮官や、警察の隊長に見える。鍛え上げられた逞しい男達だが、その顔は一様に晴れない。「えっと、葬式現場?」エルメスが、開口一番そんなことを言って、「それよりもっと悪い」一人の男が、静かに言い返した。(「死人達の国」より)など全10話収録。『キノの旅』1年ぶりの新刊。『フォトの日々も』収録。

 シリーズ第16弾。
 フォトの物語もレギュラー化したのでしょうか。色んなキャラたちのお話が読めるのは楽しいですが、キノとエルメスの出番が減ればそれはそれで淋しいものがあったりもします。
 今回のお気に入りは「恋文の国」。少しのボタンの掛け違え。もし彼や彼女が告白する勇気さえあれば、また違った未来=現在になっていたのかも。そう思わずにはいられません。他ではフォトの日々「残されたもの」が切なくぐっとくる、でもあたたかなものが残るお話で良かったです。

肷

「妖精姫の花嫁修業」

■感想メモ。
「妖精姫の花嫁修業」(月本ナシオ・一迅社文庫アイリス)
妖精姫の花嫁修業 (一迅社文庫アイリス)
 幼い頃から妖精と共に暮らし、虹の谷に祝福された王女・フィリアナ。ある日彼女は「新しい家族が出来る」と言われ、人間界に帰ることに。そこで出会ったのは、美しい青年伯爵・ライルだった。だが、冷ややかな眼差しと共に「貴女には王子の花嫁になってもらう」と宣言されたフィリアナは、ライルの厳しい花嫁修業を受けることになってしまい―?淑女への道はいばら道!?元気いっぱい妖精姫と偏屈伯爵の花嫁修業ラブファンタジー。

 フィリアナとライル、試行錯誤しながらもふたりの距離が徐々に近づいていくさまは見ていて楽しかったです。特にライルの不器用さはいいですね。
 しかし全体的に駆け足と言うか描写不足な感があり……。例えば、フィリアナが序盤老人口調から普通の女性口調に変化してたのがちょっと唐突に感じられたりだとか、陰謀や王子様についてはあっさりしすぎだったりとか。王子はふたりについてきちんとした判断を下したのに、その少しあとの場面では未練を見せたり、中途半端に優柔不断ですっきりしないなぁと。

肷

「グッドナイト×レイヴン」

■感想メモ。
「グッドナイト×レイヴン」(深沢仁・このライトノベルがすごい!文庫)
グッドナイト×レイヴン (このライトノベルがすごい! 文庫)
 息をするようにスリを行う無気力少年・鈴人。女装癖のある美少年・遊。スピード狂の無口美少女・倉日。知り合いですらなかった3人だが、怪しい男・ワタリヤにはめられ急ごしらえの怪盗チームとなる。一回7万円、実働時間は1時間以下。微妙にイリーガルな匂いのする報酬とスリルに釣られ、盗みを重ねるうちに相性最悪だった3人の距離も近づいていくが、同時に不可解な盗みに隠された意味にも気づきはじめ…。

 あらすじから、もう少しスリル溢れる犯罪行為のようなものを想像していたのですが、思いのほか(誰かに見咎められることがないという点において)安全なお仕事。淡々とした文章も相まって、緊張感はあまりありませんでした。作中の言葉を借りれば「ファンタジック」な設定も、その一因になっているのかも。全体的にさくさくとした話運びでした。
 主役3人の掘り下げもそこそこ、ワタリヤの過去やその他触れられても浅いため、1冊かけてのプロローグのような印象。次があるなら、3人の家族とかももっと見てみたいなぁと思いました。この1冊ではまだ物足りない感じ。

肷

「オカルトリック02」

■感想メモ。
「オカルトリック02」(大間九郎・このライトノベルがすごい!文庫)
オカルトリック 02 (このライトノベルがすごい! 文庫)
 元狐憑きの探偵助手・玉藻と、超絶美女の引きこもり探偵・ねえさん、向上心溢れるメンヘラ・イソラちゃん(キーワードは女子力! )。ギリギリのバランスを保っていた三角関係は、意識不明だったイソラの姉・舞花の目覚めと共に、次のステージに移行する――過剰で真摯な愛情が織りなす、混沌とした関係はどこへ向かうのか!? オカルト? マジック? ファンタジー? 夢と現実と過去が絡み合う、未だかつてない物語をご堪能あれ!

 シリーズ第2弾。
 もはやストーリーとか推理とかトリックとか真相も瑣末と言うかオマケと言うかわりとどうでもいいような扱いになっていて、その分、イソラの病みっぷりとか玉藻とねえさんの愛や愛や愛に溢れ切っています。オマケ部分に突っ込みを入れるのは、無粋なのかもしれません。
 読んでいて良く分からないシーン・脇キャラも多いですが、最終的な着地点は綺麗に収まっている不思議。
 不思議で不条理なんだけど、愛に溢れている。読んでると頭がグルグルしてくる作品でした。

肷

「千の魔剣と盾の乙女8」

■感想メモ。
「千の魔剣と盾の乙女8」(川口士・一迅社文庫)
千の魔剣と盾の乙女8 (一迅社文庫)
 エリシアやナギの姿を見て、自分が置いていかれつつあると焦るフィル。そんなフィルの頼みで、伝説の武器の「タスラム」を探すことになったロックたちは、意外な人物との再会を果たす。その頃、大陸の魔物たちも封印された魔王を復活させるため動きが始めていた。大人気魔剣ファンタジー急展開の第8弾!

 シリーズ第8弾。
 パーティメンバー順番にパワーアップエピソードをこなしていって、今回はフィルの番。なのですが、ホルプのあれやこれ(帯のネタバレが酷い…そして序盤のフラグをしっかり回収)の方がインパクトあって霞んでしまいがちなのが残念。妙にゲームっぽいギミックの神殿や、試練などもありますが、淡々と消化されて行くのであまり危機感はなかったです。
 新キャラをむやみやたらと増やさなかったのは好印象……ですが、ここにきてパーティメンバー=ハーレム要員が増えるとは。その辺収拾就くのかなぁとどうしても思ってしまうのでした。いったい何人を嫁にするつもりなんでしょうか。

肷

「プリンシアの花姫 雪の伯爵と氷の伯爵」

■感想メモ。
「プリンシアの花姫 雪の伯爵と氷の伯爵」(沢城利穂・一迅社文庫アイリス)
プリンシアの花姫 雪の伯爵と氷の伯爵 (一迅社文庫アイリス)
 妖精王と人間の間に生まれたフローリアは、感情がたかぶると花を出現させてしまう特異体質の持ち主。
妖精界の危機を救うため《ピンククリスタル》を探しに冬の国を訪れた彼女は、伯爵家の兄弟にその力を知られ屋敷に囚われてしまう。伯爵家が所有するクリスタルを譲ってもらうかわりに、毎日大量の花を捧げることになるけれど、彼らにはとんでもない秘密があって――!? 
花の乙女と伯爵家の兄弟が織りなすラブファンタジー!

 妖精界の危機の割にはあまり切羽詰まったような雰囲気ではなく、ピンククリスタルはあっさり見つかり、そこから堂々巡りで話が進まなくなってしまった感。話を進めるのがほぼ、ヒロインのお付きの妖精のうっかりミス。彼女が付いてこなかったらもうちょっとすんなり話が運んでいたのでは?と思ってしまいます。
 花を出現させるヒロインと、花を必要とする兄弟、という関係性は良いのですが、その設定ありきで描写不足を感じることもしばしば。特に兄の方が恋愛感情に至ったのがいつなのか分からない。いっそのこと弟は単なる邪魔役(恋愛関係なし)に留めておけばよかったんじゃないかなーと、最後の決断の場面を見て思ったりしました。

肷

「ブレイブレイド1 遺跡の虚人」

■感想メモ。
「ブレイブレイド1 遺跡の虚人」(あやめゆう・C★NOVELS FANTASIA)
ブレイブレイド1 - 遺跡の虚人 (C・NOVELSファンタジア)
 先の大戦の英雄を讃え、後継者を養成する目的で作られたサーディン聖央学院――その英雄を父に、「勇者」の名をほしいままにする優等生を妹に持つジンは、落ちこぼれ。早々に才能に見切りをつけ、英雄候補生らしくなく振舞う彼に周囲の目は冷たいが、妖精エリスやマイナー学科の変人学生たちとそれなりに学生生活を謳歌していた。そんなある日、研修先の遺跡で少女を拾った事で、生活は一変。「私はあなたのモノです」といい虚人と名乗るその人形めいた謎の少女の正体は?そしてジンの運命は!?

 シリーズ第1弾。
 「勇者」と呼ばれる優秀な妹、妖精、異国の女剣士(巨乳)、そして謎の少女。ヒロイン勢に囲まれて、チート魔剣を手に入れた落ちこぼれ主人公。
 パーツだけ見れば「良くある」設定ばかりですが、ここから主人公がもてはやされるハーレムが始まるわけではまったくありません。ある種のひねくれと皮肉に満ちた展開は、読んでいてわくわくしっぱなしでした。
 周りの人間は、雲の上のような実力者ばかり。しかし自分の弱さを知っているジンにはそれが強みとなって……才能に見切りを付けながらも努力は怠らず、諦めないで進むジンはかなりかっこいいです。
 ジンと別れた面々の出番もこれで終わりではないようで、いったいどのような再会を果たすのか、続きが楽しみでなりません。

肷

「魔法戦争II」

■感想メモ。
「魔法戦争II」(スズキヒサシ・MF文庫J)
魔法戦争Ⅱ (MF文庫J)
 魔法使いの少女・相羽六との出会いをきっかけに、自身も魔法使いになってしまった高校生・七瀬武。彼は、同じく魔法使いになってしまった幼馴染み・五十島くるみ、友人・伊田一三と共にすばる魔法学院に転入し、そこで魔法の勉強をすることになる。魔法にも慣れてきたある日、六が敵コミュニティに囚われた兄・十を救出しに戦乱の中に飛び込んで行ってしまう。武は六を助けるために後を追いかけるのだが、そこで見た光景は、まさに「地獄」そのものだった。魔法使いの血が舞い散り、躍る――!! 
これは、別れた世界に生きる少年少女の運命……現代・本格魔法アクション第二弾!

 シリーズ第2弾。
 前半~中盤以降までひっぱり学園祭がページ数的には多くを割いているのにもかかわらず内容が浅めであるのと、主人公たち主要キャラがバラバラな方向を向き過ぎているのが気になりました。武はやたらと六に肩入れ、六は兄のことしかほとんど考えず、くるみは武に固執するばかりで空回り、伊田は……わりと空気? 特にくるみは人間関係をギスギスさせている要因で、かといって他に何かをなすわけでもなく、”要らない子”と化してしまってます。敵にでも回らないと今後身の置き場が無くなるのでは、と思ってしまいます。
 敵となっている十もそこまで強い印象もなく、話に締まりがありません。あと敵が校内に潜入…というのが学校としては警戒ができていないのか?というのも引っ掛かった点でした。

肷